さなのばくたん。 -王国からの招待状(インビテーション)- 所感記事です。
お誕生日を控えた名取さなのもとに、「さなちゃんねる王国」から一通の招待状が届く。
『さなのばくたん。 -王国からの招待状- Powered by mouse』 INTRODUCTION
いわく、今年は様々な世界線の名取を呼んで、楽しいお誕生日パーティーを開催するんだとか。
今年こそ平和なお誕生日イベントを……と思った矢先、やはり事件発生。
だが今年の名取さなは備えていた! 探偵名取、事件解決に向けて出動!
果たして名取さなは事件を解決し、平和なお誕生日会を過ごせるのか?
昨年に引き続き、名取さなの生誕を祝いに川崎のラ・チッタデッラへ足を運んだ。今年はイベントのためにチネチッタを貸し切り、さらに館内のBGMを名取さなのオリジナル曲でジャックするという力の入れようであり、テーマパーク感がさらに高まっていた。
今回からついに声出しが解禁。序盤は『エッビーナースデイ』『メチャ・ハッピー・ショー』『PINK,ALL,PINK!』とコールアンドレスポンスを意識した楽曲たちが披露された。コロナ禍の影響によりこれまでなし得なかっただけに、名取さな自身はもちろん初期からのファンにとっては待望だったに違いない。初めてということもあり時折ぎこちないシーンもあったが、これから徐々に洗練されていくだろう。
声出し解禁により、名取さながこちら側に声掛けをするシーンもあった。お嬢様部は彼女のツボにハマってしまい何度も裏声を出させられた。謎解きのシーンでは名取さながこちらに助言を求めるのだが、足し算すらまともに答えようとしない観客たちが好きな子の前で意地悪してしまう小学生男子みたいで笑ってしまった。この辺り、普段の配信のノリそのものだった。
様々な世界線の名取さなが一同に集い、最後にみんなで踊って大団円エンドはバーチャル空間の特性を存分に生かした次世代ミュージカルといって差し支えなかった。総じて心地の良い、大満足のイベントだった。
アンコール、気付くの遅くてすみませんでした(CINE11)
今回はあまりストーリーのことを気にする必要はないだろうな……と思って気楽にしていたのだが、学生名取が王国を乗っ取ろうとした理由に「神になりたかった」と語ったとき、ドキッとさせられてしまった。かつてこのサイト上でピノキオピーさんの『神っぽいな』の所感記事を書いた際、現代社会における「神」の在り方についても記したのだが、学生名取が語るところの「神」も同様の意味合いがあるのではないかと思ったからだ。
無条件の承認を欲するとき、人は「神」になりたがる。今回のストーリーにおいて、学生名取は取り柄を持たないと自認する「人」、一方で王様名取は大衆を突き動かすカリスマ性を持った「神」という対比がなされているのだと考えられる。
多くの人たちの信仰を得られるような「神」になるのは容易ではない。特に現代インターネットはレッドオーシャンで、少々得意なことを自分なりに表現する程度では見向きもされない。だからわざと気に障るような物言いをして炎上してみたり、性的欲求を刺激するようなコンテンツばかりに頼ったりする活動者が後を絶たないわけである。学生名取の王国乗っ取り計画も、そういった過激な手法の一つと読み取ることができる。
濡れ衣を着せられたデビル名取が有罪か無罪かを問うアンケートで辛うじて有罪判決下されたのほんとすき
名取さなというコンテンツは着実に大きくなっている。今年は3月9日に後夜祭と称したCLUB CITTAでのDJイベントも開催された。さらに那須どうぶつ王国とのコラボは期間延長が決定。さらにさらに、EX THEATER ROPPONGIで初の音楽ライブの開催が決定した。
活動の積み重ねにより、名取さなという存在が「神」に近づいているのは否定できない。もっとも、本人はそんな大仰な存在になることは求めておらず、バカな言動をして茶々を入れられるインターネット芸人感が拭えないくらいがちょうど良いと思っているように見える。幸いにも彼女はいつまでも17歳のバーチャルナース姿でいられるので、現実世界の人間のように歳を重ねることで嫌でも貫禄が出てしまうこともない。羨ましい。
名取さなが私たちファンに向けてワクワクできるような面白いことを提供するには、自身がそれなりの影響力を持ち続ける必要がある。しかし一般的にファンの増加は治安の低下を招きやすい。ファンが暴徒に豹変しないよう丁寧に丁寧にメッセージを発し、なおかつコンテンツの継続のために新規ファンも招き入れる施策を打つ、という絶妙なバランスを保ちながらのセルフプロデュースが求められる。
その結果が「館内施設にサプライズ的に等身大フィギュアが飾られているのに皆がネタバレを気にするあまり写真が一切SNSに流れてこず、撤去された説まで囁かれる」なのだから面白い。こんなことが起きているうちは名取さなも安心して活動を続けられるだろう。
さなちゃんねる王国の健やかなる繁栄を願いながら、この記事を締めさせていただきたい。