ボカロ懐メロ祭2022に関する騒動と所感

今年2022年、歌ってみた界隈で『ボカロ懐メロ祭2022』という大規模な動画投稿企画が開催されましたが、一時主催者にまつわる騒動がありました。

https://twitter.com/Yc_nm0326/status/1601894565048303618

詳細についてはすでにまとめてくださっている方がいるのでそちらを参照してください。

「ボカロ懐メロ祭2022」の黒い噂と炎上騒動について

問題点について要約すると、

  • 主催者であるやっち氏はかつて「歌ってみた相互支援プロジェクト(ニコニコ愛好会)」なるものを運営しており、その参加者の動画に自分の静止画を創作元として登録させ、収益を得ていた
  • 『ボカロ懐メロ祭2022』でも同様に、参加者にはエントリーに静止画の登録を要求していた

という感じです。これにより本来ならボカロ曲の作者に分配されるはずの収益の一部をやっち氏が得ようとしているのではないか、という疑いが浮上しました。

この問題がTwitter上で物議を醸している中、なぜかやっち氏の過去のツイートが消えてしまう(消した?)というボヤ騒ぎの初動対応としては最悪の事態が発生してしまい、参加者の疑心暗鬼が加速、多数の参加辞退が起きてしまいました

その後、問題となっていた静止画の登録が参加条件から外されました。また、ゲスト参加として名を連ねていたニコニコ運営でもあるくりたしげたか氏のフォローもあり、参加者からのやっち氏に対する疑念は拭いきれなかったものの、騒動は一旦収束に向かいました。

https://twitter.com/Yc_nm0326/status/1601773059181903872
https://twitter.com/sigekun/status/1601804857568296960

企画が開催されるとハッシュタグは宣伝ツイートで溢れ、こんな騒動などどこへやらという感じで賑わっていたのですが、企画の終盤になって、ほぼリツイートしかしていなかったやっち氏よりお詫びの文書が投稿されました。

https://twitter.com/Yc_nm0326/status/1603948097465245697

リプライや引用ツイートは擁護半分、非難半分の様相でしたが、主催としてはこれでけじめをつけた扱いのようで、企画を盛り上げるようなツイートが再開されました。

ちなみにニコニコ動画で「ボカロ懐メロ祭2022」タグのついた動画は、この記事を書いている時点で約1300件あり、十分に盛り上がったと言えるのではないでしょうか。なんか賞金も増額するらしいですよ。景気いいっすね~!


私も本企画に参加する予定だったのですが、上記の騒動に伴い「こんな奴の片棒なんざ担ぎたくねーわ」となり辞退を表明しました。こういう開かれた投稿企画に参加すんのたぶん初めてだったのにねえ……

ただ、この騒動自体への興味はあったので、何度かやっち氏に問合せを試みました。得られた情報としては以下となります。

  1. 企画用静止画の親登録、および相互支援プロジェクトの運営について、ニコニコの規約に反しているかどうかはわからない
  2. 相互支援プロジェクトの運営を再開する意向はない

1に関してはまあ……煮え切らないところなんですが、おそらくニコニコとしては明確にしたいところではなく、ケースバイケースとして処理したいんでしょう。実際この企画をニコニコが支援すると決めた際には企画用静止画の親登録について特に問題視しなかったわけなので、仮にこれでやっち氏が収益を得たとしても「企画があってこその創作物」という扱いとして正当化できないこともなかったと思います。
相互支援プロジェクトもニコニコ的には再生数等の各種数値を伸ばしてくれるありがたいものなので、明確にダメとは言いたくないでしょう。ただこのプロジェクトにおいては収益獲得にニコニコの制度を使っていることが発覚したことで、今回は看過できないという結論になったのではないかと推測します。

2はそりゃそうでしょという話なんですけど、言質を取っておきたかったため確認しました。今回辞退された歌い手さんの今後の参考となれば。

企業も巻き込んだ企画ということもあり、この騒動の詳細についてあまり大っぴらに公開できない事情があるようです。その辺の苦しい立場は社会人を経験する私にも分からないことはなく、これ以上の追求はしないことにしました。


個人的にはやっち氏がマーケティング活動を通して歌い手から金銭を得ていたことに関してはどうでもいいです。歌ってみた界隈にそんな清廉潔白さなんか期待してないので。

たまにニコニコの歌ってみた動画一覧を眺めていたら明らかに異常な再生数だとか定型的なコメントばかりの動画とか見かけるし、私のもとに「再生数増加の支援しますよ」的なDMが来たこともあるので、ぶっちゃけ今回の騒動について驚きだとか失望だとか全くありませんでした。なんというか、イメージ通りです。
ちなみに今や小中学生に大人気のどこぞの歌い手ユニットなんかも、ニコニコで名前見始めたころはずいぶんと怪しい再生数・マイリスト数の推移してたらしいですよ

娯楽が飽和する現代インターネットから「歌」という参入ハードルの低いジャンルで名を上げようとするなら、こういったグレーな手法にも乗っかっていかないといけないんでしょう。


相互支援プロジェクトについて、とある方が “作品の出来と切り分けた評価(いいね・マイリスト)の仕組み化はちょっとさみしい気持ちになる” とツイートしていたのですが、ホントそうやなーという気持ちと、「でも経済活動に巻き込まれるってこういうことなんよな……」という冷めた気持ちが入り混じる感じがあります。御託はいいから結果を出して格を上げるというのは社会でもよくあることです。それが歪なやり方で積み上がった数字だとしても傍から見たら分からないわけですし。

趣味として楽しくやるのであれば数字の水増しという悪魔の果実に頼る必要はないと思います。目先の数字に惑わされずに好きな歌を好きなタイミングで好きに歌うのは楽しいですよ。私と一緒に牧歌的なインターネットをやりましょう。え?お前は別にいらない?

モテたい、チヤホヤされたい、人気になりたい、そういった願望をお持ちの方はインターネットのヤクザたちに十分気をつけてサバイブしてください。運が良ければその先に幸せが待ち受けているかもしれません。個人的には「やめとけよ」と言いたいんですけどね。