『Hollow Knight: Silksong』所感

苦痛と理不尽の連続を「試練」と捉えられるかどうか。それを問われたゲームでした。

真エンドクリアまで約90時間かかりました。金欠から始まり、序盤から2ダメの敵、暗所ばかりで視界の悪い道中、増えていく硬い敵、ゆらゆらと飛行し攻撃しづらい敵、ただただ不快な敵、そして休息地点かと思いきや嘲笑うかのような罠⋯⋯。終始しんどくて、気を抜ける場所も少なく、元気がないとできないゲームです。終わりの見えないマラソンに挑戦するかのようでした。音楽や演出は最高に素敵だし、世界観には考えさせられるものがありましたが、そこに浸ってる余裕はあんまりなかったです。

まあ、この全体的な難易度の高さはこのファールームという世界の苛酷さを身を以て体感させているとも言えるのかもしれません。それ故に、明確に癒やしとして設定されているスポットやイベントは本当に温かな気持ちになりました。

僕のようなゲーム慣れしてない人はストーリー進行ばかりを追い求めずにしっかり寄り道しないといけないです。強力な道具やステータス増加アイテムはだいたい隠されていたりサブクエストの報酬だったりするので。

ゲームデザイン的にもストーリー的にも前作ホロウナイトをプレイ、真エンドクリアしてる前提のように感じます。今作主人公のホーネットに愛着を持ってから臨んだほうが楽しめるだろうと思います。

苦痛と理不尽がベースのゲームなので否定的なレビューも散見されます。ただ開発者の方も、はなから万人受けのゲームにする気などさらさらなかったのだろうと思います。今どきのユーザーフレンドリーなゲームみたいに「遊んでもらう」みたいな謙虚な姿勢では作られてないです。

開発者というゲームの世界を形成する「神」から与えられた試練を享受し、それを乗り越えることにカタルシスを感じられるかどうか。そういうゲームのように感じました。インディーズだからこそ、そこの美学を貫き通したんでしょうね。

手放しで称賛はできないゲームですけど、このボリューム感で2300円って破格としか言えないですよ。手に取りやすさは正義です。

以下、ネタバレありで書き綴っていきます。


第1章

てか章立てだったんだ⋯⋯というのは2章入ってから気が付きました。ちゃんとスクショも撮ってたのに。

基本的に無駄な殺生は好まないのでガンガン敵から逃げて先に進めていったのですが、まあ金欠でしたね。ベンチ座るのにもロザリーが要るもんだから、時々ベンチにすら座れなくてヒヤヒヤしながら探索してました。このロザリーの渋さはたぶん意図的と言うか、世界観優先でそうなってるように思います。信仰心の高いムシがシタデルへたどり着けるのであれば、下層で燻っているようなムシたちがたくさんのロザリーを持っているべきではないのです。

ホーネットは巡礼者と同じルートでシタデルを目指していくわけなんですが、巡礼というだけあって宗教的な趣が随所に感じられましたね。何かにつけて幸運だとか、あるいは試練だとか、それが自らの選択ではなく運命的な導きであると説かれているようでした。

ボス戦は振り返ると1章が一番しんどかったかもしれないですね。ライフ少ない、道具の選択肢も少ない、敵は2ダメ与えてくるで回避優先になりがちで戦いづらかった。

最後の審判者は1章ラストの壁という感じで歯ごたえあり過ぎて歯ボロボロでした。ここが一番道具頼りだったかもしれない。ヌレガラス、アマエダモドキ、ウィドウも激強でリトライしまくりでした。この辺はナーフ前に挑んだせいもあるけど⋯⋯。もう歳のせいか集中力がもたなくて、一晩寝たら動きが読めるようになって倒せるみたいなケースが多かったです。詰まったら寝る、これに尽きる。


第2章

シタデルまで行くのもしんどかったのにさらに苛酷とかどうなってるんすか!

偉大なる門のギミックに気付けなかったので先に聖域の礎方面に向かったら戻れなくなって、薄暗いダンジョンを彷徨って2ダメ敵と対峙するとか本当に退屈させてくれないゲームです。ほんでちょっと寄り道したら今度は捕らえられて牢屋に連れてかれるし⋯⋯

この辺から行けるエリアはどこもかしこも厳しい。難所を挙げればキリがないというか、難所しかないというか⋯⋯。足場の悪いところでフラフラ飛行して攻撃(2ダメあり)してくる敵と戦わなければならない場面が多すぎるんですよね。銛を使って移動するエリアだと銛にシルクを取られて回復も困難になるのでますます難しいです。

もう無理!やってられん!となったら別のエリアを探索するようにしてたんですが、それでピンが強化できたりいい道具が手に入ったりしたので、このくらいの諦めの良さで臨んで良かったように思います。その分プレイ効率は悪かったんだろうけど⋯⋯

2章あたりから明確に「人助けをして、助けられた相手がそれに応える」みたいなイベントが結構あって、苛酷な世界だからこその人(ムシ)の温かみが身に染みました。このゲームこういう機微を感じさせる台詞とか演出が上手いんですよね。

キリスト教に「隣人を自分のように愛しなさい」という教えがあるんですが、それをゲームの中で説いているかのように感じました。身の回りの人たちと関わり合って愛着を持つことが、世の中を良くしていきたいという気持ちの萌芽に繋がるのかもしれません。

レース、シルクの母を撃破し、取りこぼし要素を回収しながら3章フラグを立てていく。


第3章

シルクソングはプレイヤーに絶望を与えるのが本当に上手です。セーブデータが開けなくなったところでまず焦りましたし、その後の崩壊したシタデルで強化された雑魚敵に遭遇して絶望、なんとか鐘鳴りの駅にたどり着いてシタデル脱出しようと思ったら駅をボスに乗っ取られててさらに絶望⋯⋯。

けっこうなNPCがこの章で死ぬのでエリアを巡るたびに悲しい気持ちになりました。世界救出には犠牲が付きものデース⋯⋯。

アビス突入と帰還、熱かったです。少年漫画のような熱さ。こういうのでいいんだよ。

ここからは霊媒師に捧げる3つの心臓を入手しに行きます。霊媒師がヒントをくれた順に向かっていったんですが、最初のカーメリタが一番難敵でしたね⋯⋯。あと緑の王子の心臓も使えるもんだと思ってなくて、結果的に珊瑚の塔をスルーして物語を進めてしまいました。

アビス再突入の前に寄り道。無限に見落としスポットが見つかる。

アビス再突入、漆黒のレース撃破。

余談。

  • レースちゃんの声優さんは日本人のファンの方が当てているらしい。あんな声優らしい声のファンがようおりましたね⋯⋯ ちなみにホーネットの声もオーストラリア在住の日本人だそうで。
  • 2019年のイベントでシルクソングのデモプレイが行われていて、炉の娘とバロンはその時点から存在していることを確認した。だからあんな重要な役割を負ってたのね!