なぜウエスタンなのか、なぜテトラポットを登ったのか

aikoの『ボーイフレンド』のことである。

 

たまにあるじゃないですか、ちょっと昔の曲を聴きたくなるときとか。aikoも学生のころ流行ってたんでね、よく聴いてたんですよ。今なら歌だけじゃなくて音作りの方にも多少耳を向けるようになったりして色々新しい気付きを得たりするわけですよ。

で、このボーイフレンドという曲。もう曲名から「恋愛ソングだぞ!!!!」という意気込みが伝わってくるんですけど、この曲恋愛ソングとしてなんかちょっとズレてません??????
もうそれが気になってから毎日仕事中にボーイフレンドに脳内を支配されているんです。助けてくれ。


謎のウエスタン要素

まあまずMVを見てくださいよ。

なんでちょいちょい牧場の納屋みたいなとこにいるの?????
奏者の方々はカウボーイハット被ってるし。もう雰囲気が完全にウエスタン。本当にこれから恋愛ソング歌われるんですか???????

音の方もよくよく注目してみると、イントロや間奏でテンテケ鳴っている楽器はバンジョーみたいです。バンジョーて。「バンジョーとカズーイの大冒険」以来に口にしたぞその言葉。バンジョーの音色から女の子のお惚気恋愛ソング想像するの無理くないですか??????荒地の中で馬を走らせるカウボーイのおっさんがロープ片手に「ハンバーーーーーーーーーグ!!!!!」と叫んでる姿のほうが目に浮かびません???????

マジで誰が編曲するときにバンジョー使おうぜとか言い出したんだよ……前衛的すぎんだろ……「バンジョー 邦楽」で検索しても知ってる曲全然出てこないし。『走れマキバオー』が一番有名か?やっぱ牧場と馬じゃん。恋愛のレの字もねえ。

ちなみにMVのほうは後半aikoさんもカウボーイハット被って男どもと銃撃戦を繰り広げています。これ本当に恋愛ソングのMVなんですか????????


サビで急にテトラポットに登る

MVと曲はちょっとズレてる。でも歌詞はしっかり恋愛ソングですよね?なんかちょっと嫌な予感はするけどaikoといえば恋愛ソングですもんね?

早く逢って言いたい あなたとの色んな事
刻みつけたいくらい 忘れたくないんだと
早く逢って抱きたい すべての始まりがあなたとで
本当に良かったと心から思ってる

良かった、めちゃくちゃ恋愛ソングだ。のっけからボーイフレンドに対する欲情が溢れている。

唇かんで 指で触って
あなたとのキス 確かめてから

あ~キスの感触が忘れられないんですね。甘酸っぱいですね~。

雨が止んで 星がこぼれて
小さな部屋に 迷い込んだ

ん?なんか情景描写入ったな?これはサビに向けての「タメ」ってやつですね!さあいよいよサビだ!ボーイフレンドに対するとびきりの恋愛感情を見せてやってください!!

Ah~♪

まだ溜める!来るぞ!

テトラポット登って~♪

?????????????????

…………そう、ここで大半の人はサビ頭に繰り広げられる「テトラポット」という用語に惑わされて後の歌詞が全然入ってきません。だって最初のサビですよ?曲のメインディッシュに当たるところですよ?そこで散々惚気話してたボーイフレンドほっぽり出してテトラポット登り出すとかどういうことなんですか??????この後宇宙に靴飛ばしてるんですがそれすらどうでも良くなっていて、最後「ボーイフレェェェェエェエェエェェェェェン」という力の入った締めでようやく引き戻されるんです。あ、これ恋愛ソングだったわ、って。

ひょっとすると『小さな部屋に迷い込んだ』時点で恋焦がれすぎてちょっと幻覚状態になっていて、サビでテトラポットとともに夢の世界へご案内されていたのかもしれません。探しにいくんだテトラトリップ。いやそうだとしてもサビに4拍タメ入れてまでテトラポット持ってくる発想がおかしいよ……

aikoさんの曲それなりに聴いてるけど、よりによってサビでこんな意味分からない表現しだすのはボーイフレンドくらいじゃないですか?「aikoのボーイフレンドってテトラポット登るやつでしょ?」みたいな認識の人も多いのでは?だってメディアで流れるときとか大抵サビ頭からでしょ?いくら他のところでボーイフレンド好き好きアピールしててもサビで呑気にテトラポット登ってたらなんも伝わりませんからね???


……という感じで今振り返るとなんかちょっとおかしい曲だな、という印象を受けました。でもバンジョーを鳴らさない、テトラポットに登らないボーイフレンドなんてあり得ない!と感じるくらい楽曲の根幹を担っている気がします。

この曲のリリースって『花火』や『カブトムシ』が全国的にヒットしてaikoの名が売れに売れていた頃なんで、aikoさん自身も周りの人達も浮かれまくってたのかもしれないですね。そりゃバンジョーも鳴らしたくなるし、テトラポットに登りたくもなると。制作陣の当時のイケイケ陽気な心情が楽曲に現れたのかもしれません。